それでも、希望は捨てたくなかった。運命に抗いたかった。

そして何よりわたしの願いはひとつだけ。一分でも一秒でも長く藤原くんと過ごしたかった。

「結衣、一緒に帰ろう」

放課後になり藤原くんは振り返ってそう言った。

学校にいる間も藤原くんは特に変わらない様子で過ごしていた。

わたしが藤原くんの立場だったらきっと取り乱して学校に行くこともできず家に引きこもっていたに違いない。

うん、とうなづいてから立ち上がると、「結衣、また明日ね~!」と隣の席の川ちゃんがわたしに手を振った。

わたしはそっと右手を持ち上げて胸元で手を振った。

「いつの間に仲良くなったんだ?」

わたしと川ちゃんを見つめて驚いた様子の藤原くん。

「奏多君が休んでるときに、ね。まぁ、元々うちのお姉ちゃんに結衣のことは聞いてたから声かけてみようかなって思ってたんだけどね」

「お姉ちゃんって?」

川ちゃんの言葉に藤原くんが聞き返す。

「うちのお姉ちゃん、図書委員で委員長やってんの。図書館だよりを作ってくれる人がなかなか決まらなくて焦ってた時、結衣が手をあげてくれたんだってすごい感謝してた」

川ちゃんのお姉ちゃん。図書委員の委員長。お姉ちゃんって川崎さん……!?

「ははっ、結衣ってば驚きすぎ!」

あまりの驚きに固まるわたしを見て川ちゃんがケラケラ笑う。