わき腹が痛むのも無視してがむしゃらに走り続けた。

藤原くんの家が見えてきた。

門扉の前までやってきて膝に手をついて呼吸を整える。

よしっと心の中で気合を入れてから、呼び鈴に人差し指を伸ばす。

そのとき、ふいに人の気配を感じた。

あっ。

視線を向けた瞬間、木でできている濡れ縁に腰かけている藤原くんの姿が視界に飛び込んできた。

藤原くんはうつむいたまま子供のように足をブラブラと揺らして地面の小石を蹴っていた。

その姿は普段の藤原くんからは想像がつかないぐらいなぜか弱々しく見えた。

わたしの知らない藤原くんがそこにはいた。

そのとき、藤原くんがうつろな目をわたしに向けた。

ほんの数メートル先に居る藤原くんはわたしに気付くと驚いたように目を見開いた。

逃げるように立ち上がろうとした藤原くんに気付いて、わたしは駆け出した。

自分でも驚いた。

頭で考えるよりも先に体が動いていたから。

わたしは藤原くんの腕を掴んだ。

「……――!!」

言葉は出てきてくれない。藤原くんが振り返る。