わたしの隣で小さな体を丸めてその胸の痛みに耐えているおばあさんがいるのは現実だったから。

「おばあさん……、藤原くんは今どこにいるんですか?」

「家にいるよ」

「一緒に行ってもいいですか?」

「ごめんね。わたしはもう少しここにいる。結衣ちゃん、奏多のそばにいてやっておくれ」

「……はい」

わたしはバッグを掴むと勢いよく立ち上がった。

「ありがとうね、結衣ちゃん」

おばあさんに頭を下げると、わたしはバッグを肩にかけて駆け出した。

藤原くんの家の場所は記憶している。

緑ヶ丘公園を出ると、わたしは更に足を速めた。

一刻も早く藤原くんに会いたかった。その顔が見たかった。

会ったところで何を話そうかなんて考えられなくて。

とにかく、一分でも一秒でも早く藤原くんの元へ行きたかった。

――藤原くんに会いたい。

田園風景が続くあぜ道を息が切れるのもお構いなしに走り続ける。

走って走って走って。運動不足の足がつりそうになる。