「わたしも……そう思います。わたしにそう言わなければいけなかった事情があるような気がするんです」

「結衣ちゃん。これはわたしの勝手な想像だけど……」

「はい」

「前に奏多が一か月前に事故を予知したって言ったわよね?もしもよ、もしもまた予知してしまったんだとしたら。誰かが死ぬ未来が見えてしまったんだとしたら……?」

「まさか……」

「3人のお葬式の日、『次は僕の番だ』って言っていたのがずっと気になっていてねぇ。こんなこと信じてもらえないかもしれないけど、奏多は夢に見てしまったのかもしれない」

おばあさんはそこで言葉を切った。

これ以上ないというほどに顔を歪ませるおばあさんの言葉の続きはわたしが最も聞きたくない、信じたくない未来だった。

「自分の死が迫っていることに」

しわだらけの顔をさらにしわくちゃにしておばあさんは肩を震わせた。

藤原くんの死……?

「そんな……」

「奏多が結衣ちゃんを遠ざけようとしているって聞いて……確信を持った。あの子は残された人の痛みを身をもって知っている。だから、結衣ちゃんにそんな思いをさせたくなくて……。もちろんこれはわたしの勝手な憶測だけど……」

目の前が真っ白になる。

胸の奥から言葉にしようもない感情が押し寄せてくる。

口に手を当てて嗚咽を堪えようとするおばあさんの隣でわたしは震える指先を隠すように両手を握り締めた。

顔中が強張る。

まさか、と笑い飛ばしたい。そんなことありえないって声を大にして叫びたい。

でも、わたしにはできなかった。