元気で笑ってさえいてくれればいいの。

藤原くんが幸せならそれでいい。

藤原くんがどうしてもわたしとの関係を断ち切りたいって言うなら、それを受け入れるしか道はない。

そもそもわたしと藤原くんは恋人同士なわけじゃないし、友達……ってことになる。

休日に遊んだこともあるし、多分、友達。

それすら辞めたいし、連絡も取り合いたくないってよくよく考えたら結構深刻かも。

あぁ、ダメだ。ネガティブ思考で頭がいっぱいになってしまう。

ギュッと痛いぐらいに唇を噛んで泣きそうになるのを堪えていると、

「あらっ、結衣ちゃんかい?」

聞き覚えのある声が頭上から降ってきた。


目を開けるとわたしの顔を覗き込むように藤原くんのおばあさんが立っていた。

慌てて起き上がると、おばあさんは「隣、失礼していい?」とわたしの隣に腰を下ろした。

「藤原くん、元気にしてますか?」

「元気だって本人は言うから先生にもそう伝えているんだけど……」

歯切れの悪い言い方をするおばあさん。

「どういう意味ですか……?」

「空元気っていうのかねぇ。元気な振りをしてるんだよ。前にもあったのよ。事故で家族を失った後も……同じ顔をしていたの」

おばあさんの表情が暗くなる。

「何かあったのか聞いても、『何もないよ』って言うのよ」

「そうなんですね……」

「奏多、結衣ちゃんに何か言ってなかったかい?」

悲痛な表情を浮かべるおばあさんにわたしは今の状況を打ち明けた。

「孫バカって思われるかもしれないけど、奏多は突然そんなことを言う子じゃないと思うの」

『二人で会うのも連絡を取り合うのもやめよう』

『俺とのこと全部忘れて』

藤原くんがそんな事を言うには何か理由があるはず。おばあさんもわたしと同じ考えだった。