「っ……」

答えようとしても答えることができない。

「あっ、突然ごめんね。無理しないでいいよ!」

わたしは机の中からメモ帳を取り出してペンを掴んだ。

【ねこ だっていってたよ】

その様子を黙って見つめていた女の子は、

「えっ、嘘。あれ猫?ねぇ、みんな、あれ猫だってー!」

大声で叫んだ。

その瞬間、教室中が収集がつかないぐらいの笑い声に包まれた。

目に涙を浮かべて笑っている人までいる。

やっぱりみんなそういう反応になるよね。

思わずくすっと笑うと、「小松さん、笑えんじゃん」と隣の席の女の子が微笑んだ。

「あたしのことは川ちゃんって呼んでね。あっ、呼ぶっていうか、別に声に出してとかじゃなくて」

しまった、という表情を浮かべた後、しどろもどろになる川ちゃん。

胸の中が温かくなる。

わたしはずっとこんな会話をしたいと思っていた。

ずっと誰かとこうやって関わり合いを持ちたいと願っていた。

それなのに、自分の周りに目には見えないバリアを張り人を遠ざけた。

傷付きたくなかったから。弱い自分を守りたかったから。