彼の隣の女の子が「やめなよ、可哀想」と彼のわき腹のシャツを引っ張る。
「あっ、そっか」
彼も空気を察して困ったような表情を浮かべる。
今しかない。
わたしは彼に視線を向けたまま首を横に振った。
「あ、やっぱ、これ奏多……?だよなー!小松なわけないかぁ~!」
わたしの反応に驚いたように言う彼に周りのクラスメイトが同調して笑いだす。
「つーか、これ恐竜とかそういう系?奏多オリジナル?すげぇーなアイツ。このクオリティで全校生徒が見る図書館だよりに載せるとかメンタル強すぎない?」
「奏多くん、超ウケる!」
「えっ、これ恐竜っていうか怪獣系じゃない?こういうキャラ前テレビに出てなかった~?」
「この絵の正体が気になるんだけど」
わたしが藤原くんの絵を見た時と同じ反応をするみんな。
やっぱり誰がどう見てもあれを『猫』だと一発で当てられる人はいないようだ。
「ねぇねぇ、小松さん。この絵、恐竜なの?怪獣なの?いったい何なの?」
すると、隣の席の女の子がトントンッとわたしの肩を叩いた。
にこりとやわらかい笑顔を浮かべるのはみんなに川ちゃんと言われて慕われている女の子だった。