「えっ、これって図書館だより作ったやつが書いたってことでしょ?奏多が書いたの?それとも小松?」

わたしの予想通り、クラスメイト達の視線が一斉に向けられる。

好奇の目に晒されて心臓が不快な音を立てる。

こういう雰囲気は大の苦手だった。みんなに注目されて思わず右手を握り締める。

今まではずっとスカートを握り締めていた。

スカートの中に消えていくわたしの言葉たち。

でも、今はちょっと違う。

藤原くんが右手の手のひらに書いてくれた猫の絵は消えちゃったけど、今もそのぬくもりだけは残りわたしを励ましてくれる。

「これ、書いたのって小松?」

藤原くんと仲の良い男の子が立ち上がって後ろを振り向く。

目が合った。彼はわたしに言葉を投げかけてきてくれている。

口を開けても何も言葉は出てこない。

きっとこの場に藤原くんがいたら、『それ書いたの俺』と助け船を出してくれただろう。

でも、今、藤原くんはここにはいない。

結衣、大丈夫。あなたならできる。きっと大丈夫。

自分を信じてあげたい。

わたしなんか、じゃなくて。わたしだから。わたしなら。

そう思ってあげたい。

そう思わせてくれた藤原くんのためにも。