頭じゃなく、心が記憶してるから。

藤原くんとの日々を何一つ漏らすことなく鮮明に。

込み上げてくる感情を抑えきれず、ボロボロと涙を零す。

涙はとめどなくあふれてわたしの頬を濡らす。

二日前の幸せな時間が今は嘘のよう。

今のわたしは急転直下。真っ逆さまに底なし沼に落っこちてしまったみたい。

人生って本当にうまくいかない。

空の上にいる神様はどうしてこうも試練ばかり与えるんだろう。

ただただ、平凡に。ただただ幸せに生きたいだけなのに。

それすら願ってはいけないの……？

「うぅ……」

膝の間に顔を埋めて涙を流す。

涙は止まらない。そのとき、思い知らされた。

わたしはこれほどまでに藤原くんのことが好きだったんだと。

遅いのに。もう、何もかも遅いのに。

鼻をすすると嗚咽が漏れた。

『結衣』

わたしの名前を呼ぶ藤原くんの声を思い出してわたしは声をあげてむせび泣いた。