藤原くんの背中が徐々に遠くなる。

それはわたしと藤原くんの心の距離みたいだ。

空は青く晴れ渡っているのに、わたしの心は土砂降りの雨。ううん、ひどい雷雨だ。

心がこれ以上ないっていうほどかき乱されて、制御不能になってしまっている。

「藤原くんの……バカ」

どうして急に関係を終わらせようなんて言うの?どうしてその理由を教えてくれないの?

藤原くんの姿が見えなくなると、わたしはポツリとそう漏らした。

目頭が熱くなって鼻の奥がツンっと痛む。

胸をえぐられるような痛みに思わずその場にしゃがみ込み、胸に手を当てる。

「どうして……あんなこと言うの……」

今までのこと、全部なかったことになんてできるわけない。

忘れることなんてできるはずもない。

だって、藤原くんとの出来事、そのひとつひとつがわたしにとってかけがえのないものだから。

大切だから。

藤原くんも、藤原くんとの思い出も。

全部全部、大切なの。

忘れてくれってどんなに頼まれたって忘れられない。