腕を顔からどかして目を開けると、藤原くんは手の甲で涙を拭ってから体を起こした。

土曜日とは様子の違う藤原くんに戸惑う。

笑顔も見せず険しい表情を浮かべる藤原くん。

わたしはメモ帳とペンを取り出し、書きなぐるようにこう記した。

【怒ってる?】

「怒ってないよ」

【私なにかいやなこと】

「してない」

【どうしてメッセージの返事】

「――もうやめよう」

藤原くんの声に力がこもる。

「もうこうやって二人っきりで会うのも、連絡とるのもやめよう」

鼓膜を震わせた藤原くんの言葉はわたしを完膚なきまでに叩きのめす。

心臓をグリグリと槍か何かで突き刺されているみたいな痛み。

「俺とのこと全部忘れて」

【どうして?】

突然のことに状況が飲み込めない。

震える指先でそう書き込んだメモ帳を藤原くんは見ようとしない。

もうそれすらみたくないという藤原くんの決意の表れのように思えた。