藤原くんのおばあさんとおじいさんの姿は見えない。

藤原くんのことを何か聞けるかもと期待したけどうまくはいかなかった。

緑が丘公園が見えてきた。葉桜になった桜の木の枝が風に揺れている。

一歩一歩ゆっくりと桜の木の方へと歩みを進める。

藤原くん……。

そこにはわたしの予想通り藤原くんがいた。

桜の木の下の芝生の上に制服姿のまま左の腕で顔を覆うようにして眠っていた。

そっと近付いていき藤原くんの隣に腰かける。

藤原くんはやっぱり泣いていた。

重力に従うように流れ落ちる涙が耳元を濡らす。

心がはち切れそうになる。藤原くんの心は今もなお深く傷ついているに違いない。

大切な人を一度に３人も失う苦しみを味わうなんて想像もつかない。

そっと藤原くんの顔に手を伸ばす。徐々に近づいていくわたしの指先。

あと少しで触れるというところまで来ると、


「ストップ」

藤原くんが私を制止した。