【藤原くんの力になりたい】

【わたしをすこしでも頼ってほしい】

わたしが助けてあげるとかそんな大それたことは言えないけど、わたしにも何かできることがあるならしたい。

藤原くんの為に。

緊張で少しだけ手が震える。

「ありがとうな、結衣」

そんなわたしの気持ちを察してか藤原くんはポンッとわたしの頭を叩いた。

わたしが事故のことを知っていると藤原くんは知らない。

いつも笑顔で何の悩みもなさそうな藤原くんの心の傷。

それを藤原くんは一切見せようとしない。

以前、風が吹いた日に見つけた額の傷跡。

緑ヶ丘公園の桜の木の下で、藤原くんは眠ったまま涙を流していた。

今もまだ、苦しんでいるに違いない。

ねぇ、藤原くん。いつか、藤原くんの口から聞いてみたい。

藤原くんの弱さを。

わたしに話してくれるかな。

「結衣は今、幸せ?」

わたしは大きくうなづいた。

【幸せだよ 藤原くんと一緒にいられて 藤原くんは?】

「俺も幸せ。結衣と一緒にいられて」

【ずっとこんな日が続くといいな】

「続くよ。明日も、明後日も」

【藤原くんと】

【一緒にこうやって話したり】

【遊んだり】

【笑ったりしたい】

藤原くんが微笑む。

「心配すんな。これから先も一緒に過ごそう。約束な」

【うん。約束ね】

藤原くんはわたしの答えに満足したように微笑むと、大きく背伸びをした。

「てかさ、もうすぐ夏だし、今度はかき氷食いに行くかー」

【まだ早いと思うな】

「んー、じゃあ今度はタピオカミルクティー飲みに行く?」

【うん!】

わたしは笑顔を浮かべて大きくうなづいた。