その途端、藤原くんの顔からすっと笑みが消える。

空気が変わった気がした。

あれ?どうしたんだろう。心配になって眉をㇵの字にした時、

「ごめん」

藤原くんは謝った。

と同時に体がふわりと温かい何かに包み込まれた。

甘くて優しい香りが漂う。

驚きでただぼうぜんと立ち尽くすわたしの体を藤原くんがギュッと抱きしめる。

「笑い声、初めて聞いてメチャクチャ動揺してる」

藤原くんの声がかすれる。

「可愛すぎだから」

わたしは身動き一つとれずに固まり続ける。

「ヤバい。俺、相当結衣にハマってる。嫌なら俺の背中叩いて」

わたしの重力に負けた腕はだらりと下がったまま動かせない。

今の状況がほんの少しずつ理解できるようになってきた。

わたし、今、抱きしめられてる。藤原くんに。

何か言おうと思ってもやっぱり言葉は喉の奥にあったまま出てきてはくれない。

嫌なんかじゃない。だって、わたしは藤原くんが好きなんだから。

だから。わたしは言葉の代わりに藤原くんの腰のシャツをキュッと両手で掴んだ。