「ふふっ」

思わず笑っていた。ごく自然に。自分でもびっくりして目を見開く。

「あっ!」

藤原くんが声を出した瞬間、足元にいた猫は迷惑そうに立ち上がり大きく伸びをして歩き出した。

「今……、結衣、笑った?」

驚いて固まっているわたしの元まで歩み寄ってきた藤原くん。

こくりとうなずくと、「だよな?」と言って顔をクシャクシャにして笑った。

わたし、声を出した……?出したというか漏れたというか。

しゃべったわけではないし、笑い声だけど。

学校外ではしゃべれるけど、学校の人と一緒にいる時はしゃべることはおろか声を出すこともできなかったのに。

それなのに今、わたしは自然と笑っていた。

自分自身、あまりの驚きに反応が薄くなる。

「すげぇ!マジか。結衣、やったな!」

何かすごいことでも成し遂げたかのように藤原くんは興奮した口調でわたしをたたえる。

ただ笑っただけでこんなに褒めてもらえるなんて。

嬉しい。わたし、笑えた。笑えたんだ。

くすぐったい気持ちになって微笑んだ時、藤原くんと目が合った。