「俺には気を遣わないでいいんだって。本当は?」

わたしの本当の気持ち。いつだって抑え込んでいる気持ち。

言ってもいいのかな?

藤原くんの顔を覗き込む。

「そんな心配すんなって」

わたしの背中を後押ししてくれる藤原くん。

その言葉を信じて、わたしはメモ帳にペンを走らせた。

【猫カフェ】

「うん」

【行ってみたい】

「よくできました。じゃあ、猫カフェ行こう」

藤原くんは偉いぞ!と子供を褒めるかのようにわたしの頭をクシャクシャと撫でた。

やった本人は無自覚なのかもしれないけど、やられた方は意識しすぎてしまい歩く仕草もギクシャクしてしまう。

藤原くんが先に歩き出す。

その背中を見つめながらわたしは願った。

こうやって、これからも一緒にいられますように。

どんな関係かなんて関係ない。そこまでの高望みはしない

ただ、一緒にいたい。藤原くんの隣じゃなくても、彼のすぐそばに。

「――結衣」

隣にわたしがいないことに気付いた藤原くんが振り返ってわたしの名前を呼ぶ。

わたしの名前を呼ぶ藤原くんの顔には似合わない低い声が好き。

わたし、藤原くんが好き。

慌てて藤原くんに駆け寄る。

「なんかあった?」

ううん、と首を横に振る。

あったといえばあったんだよ。藤原くんへの気持ちの強さを実感しちゃったの。

「それならよかった」

何も知らない藤原くんは満足げに笑った。