「じゃあ、またなー!」

わたしの肩を左手で抱き寄せ、軽く右手を挙げて歩き出す藤原くん。

わたしは藤原くんの友達に頭を下げると、そのまま店を後にした。

「さっきの中学の時の友達。うるさくてごめんな」

店を出ると、藤原くんは何事もなかったかのようにスッとわたしの肩から手を離した。

「で、どこ行く?」

ファミレスへ着く前、藤原くんはいくつか候補を出してくれた。

優柔不断なわたしはその選択肢の中からどれがいいのか選び切れずに考え込む。

「どっか行きたいところある?」

藤原くんの問いに顔を持ち上げた瞬間、彼の背後にある大きな看板に目がいった。

思わず目を見開く。

「ん?」

わたしの反応に気付いた藤原くんが振り返ってわたしの視線の先を追う。

「猫カフェ?」

【新規オープン!猫好きさん☆たくさんの可愛い猫ちゃんと触れ合いませんか?】

そんな心惹かれるキャッチフレーズの横には愛くるしい表情の複数の猫の写真。

動物は基本的に好き。でも、猫は別格。

何とも言えないあの独特な距離感とツンデレ具合がたまらない。

「結衣、猫カフェ行きたい?」

わたしは猫が大好きだけど、藤原くんが猫好きかどうかは分からない。

【どこでも大丈夫だよ】

メモを見せながら微笑むと、藤原くんは真っ直ぐわたしの目を見つめた。