「奏多君、超久しぶりじゃん!」

「おー、久しぶり。卒業以来だな。お前ら、元気だった?」

「元気元気!奏多も元気そうだな。今度暇なとき遊ぼうぜ!」

「あぁ」

そのとき、彼らの視線がわたしに向けられた。

「つーか、もしかして奏多の彼女……?」

「そうなの?」

見定められているような居心地の悪さを感じる。

「えっ、彼女、なんていう名前?何中の子?」

4人から送られてくる視線に思わずギュッと右手を握り締める。

体中に感じる焦燥感。名前を答えたくても答えようがない。

メモ帳に【小松結衣です】と書いたのを見せたら藤原くんの友達は一体どう思うんだろう。

どんな反応を示すんだろう。わたしがしゃべれないことが分かったら、藤原くんまで悪く思われてしまうかもしれない。それだけは絶対に避けたい。

「あんまジロジロみんなよ。俺のだから」

すると、藤原くんはスッと席から立ち上がりわたしの横まで移動した。

「行こう」

藤原くんに促されて席を立つと、

「つーか、久しぶりに会えたんだし奏多君たちこれからやることないなら一緒に遊ぼうよ!」

派手なタイプの女の子がそう提案した。

一緒に遊ぶ?それなら場違いなのは間違いなくわたしだ。

藤原くんだって久しぶりに会えた友達と遊びたいかもしれない。

藤原くんに視線を向けた瞬間、

「無理無理。俺ら、今デート中だから」

藤原くんはそっとわたしの肩に腕を回した。

藤原くんの体がわたしの体に密着している。ふわっと藤原くんから甘い香りが漂ってきてくらくらする。