藤原くんと揃ってファミレスにやってきたわたしは気軽な気持ちで足を踏み入れてしまったことを今さらながら後悔していた。

よくよく考えれば、向かい合って食事をすることになる。

目の前には運ばれてきたグラタン。スプーンを持つ手が小刻みに震える。

そんなわたしに気付いているのかいないのか藤原くんは目の前のハンバーグを慣れた手つきで切りフーフーッと息を吹きかけている。

でも、その回数が異常に多い。

しばらく藤原くんの様子を伺っていてハッキリしたことがある。

藤原くんは猫舌だ。

「俺、昔から猫舌で熱いのすぐ食べられないんだよ。今もちょっと舌火傷したし」

えっ。何度もフーフー息を吹きかけてたのにあれでも火傷しちゃうの?

真顔で言う藤原くんがおかしくてくすっと笑う。

「いや、マジでここのハンバーグの熱さ異常だから。食ってみ?この熱さを共有したい」

藤原くんはフォークにハンバーグを一切れさして持ち上げると、わたしの口元にハンバーグを移動させる。

「はい、あーん」

えっ。きょとんっとするわたしに藤原くんがにやりと笑う。

「ほら、腕疲れたから早く」

恥ずかしさと藤原くんに急かされたことでわたしの頭の中はパニック寸前だった。

考える余裕もなくわたしは急かされるままハンバーグにかぶりついていた。

口の中に広がるハンバーグの味。わたし好みの味だ。

「なっ、熱いだろ?あっ、言い忘れてた!火傷注意な!」

しまった!としたような表情を浮かべる藤原くん。

少し熱い。ひいき目にいってそこそこの熱さ。

でも、このレベルで舌を火傷するっていうのがちょっと信じられない。