「――結衣」
5分前に待ち合わせ場所に着いたのに、すでに藤原くんは公園のベンチに腰かけていた。
慌てて駆け寄り頭を下げる。
【おくれてごめんね】
「いや、遅れてないよ」
【でも】
「俺が楽しみで先に来てただけだから」
藤原くんはニッと笑いながら立ち上がった。
「結衣、可愛い。私服姿新鮮だなー」
さらりと言ってのけた藤原くん。
わたしは顔から火が出そうなぐらい恥ずかしくなって顔中の筋肉という筋肉がピクピク動いているような気がしてまともに藤原くんの顔を見ることができなくなってしまった。
そもそもわたしの私服姿なんかより、藤原くんの私服姿の方が新鮮でレアだ。
公園の中で藤原くんだけが光を浴びて輝いているみたいに見える。
遠慮がちに言って、カッコいい。
かっこよすぎる。カッコいいという言葉は彼の為にあるみたいに。
「どこいく?映画館、水族館、動物園。あっ、買いたい物あるならショッピングでもいいけど。あとなんかあるかなー」
ガチガチに緊張してしまっているわたしは藤原くんの言葉の困ったように首を傾げることしかできない。
そんなわたしの気持ちを察した様子の藤原くん。
「結衣、腹減ってる?」
【うん】
昨日の夜から緊張でまともに食事が喉を通らなかった。
「オッケー。じゃあ、早いけど昼食べるか」
わたしは藤原くんにリードされてゆっくりと歩き出した。