「――結衣、待たせてごめん!」

飛び込んできた藤原くんは慌てて走ってきたのか肩で息をしている。

わたしの姿を見つけるとホッとしたように息を吐いた。

「頑張って、小松さん!陰ながら応援してるよ」

川崎さんがわたしの耳元でそっと囁く。

途端、なんだか急に恥ずかしくなってわたしは耳まで真っ赤に染めてうつむいた。

わたしの気持ちを川崎さんは知っている。

わたしが、藤原くんを好きなことを。

にっこりと微笑む川崎さんと、うつむき照れ隠しをするわたし。

そんなわたしたちを藤原くんは不思議そうに見つめていた。


「ずいぶん川崎さんと仲良くなったんだな~」

学校を出ると、藤原くんは弾んだ声で言った。

うん、とわたしはうなずいた。

先輩だし仲良くなったというのは違うかもしれないけど、川崎さんはわたしの良き理解者になってくれている。

わたしにとって大切な存在なのは間違いない。

ここ数週間でわたしを取り巻く環境はめまぐるしく変化している。

それはきっと藤原くんに出会えたから。

「つーかさ、図書館だより作り終わったしこれから暇になるじゃん?」

確かにもう放課後こうやって一緒に図書室に集まる必要もなくなる。

もちろん、図書委員の仕事はあるけれど月に一回集まるだけ。

それと同じく月に数回のカウンターの仕事のみ。

「しかも、今日金曜日じゃん?」

なぜか珍しく回りくどい言い方の藤原くん。