わたしは藤原くんの後姿をぼんやりと眺める。

ねぇ、藤原くん。わたしまだ何も答えてないよ。

図書室に行くとも行かないとも。

もしかすると帰っちゃうかもしれないよ?

そんな意地悪なことを思う。

少し歩くと、藤原くんと女の子たちは渡り廊下の方へと姿を消す。

なにこれ。どうして。どうしちゃったの、わたし。

視界が滲んで目の前がかすむ。

そこで気付く。わたし、泣いてる。

唇を震わせて。喉の奥からせり上がってくる嗚咽を必死に堪える。

不思議な感情が沸き上がってくるのに、それを留める術がない。

いやだな、わたし。行かないでって思ってしまった。

藤原くん、行かないで。わたしを置いていかないで。

そんなことを思う権利はわたしにはないのに。

わたしはいつからこんなに独占欲が強くなってしまったんだろう。

慌てて涙を拭いて女の子と藤原くんの残像を脳から追い出すようにクルリと背中を向けて図書室に向かって歩き出す。

これってどういう感情?自分自身に問いかける。