「お父さんとも話してたの。最近、表情が明るくなったねって。結衣が自分から進んで学校のお友達のこと楽しそうに話してくれたのすごく久しぶりな気がする」

視線を向けると、お父さんは照れ隠しからか慌ててわたしから視線をそらした。

「そ、そうだっけ……？」

「そうよ。お父さんもお母さんも結衣が生きていてくれるだけで幸せ。でも、笑顔で楽しそうならもっともっと幸せ」

「お母さん……」

「今度はうちにお食事にきてもらいましょう」

母はそう言うと、鼻歌交じりにキッチンへ入っていった。

全ての話を聞いていた父はポケットの中からスマホを取り出したりしまったり意味もない動きを繰り返す。

今までは「ごめんね」と繰り返し伝えていた。

こんな娘でごめん。

出来損ないでごめん。

みんなと同じことができなくてごめん。

普通になれなくてごめん。

迷惑をかけてごめん。

心配をかけてごめん。


でも、今日はこう言ってみたい。前向きな言葉を。

「ありがとう」

たった５文字の感謝の言葉。父と母はわたしを見つめて偉いぞ！と褒めるように大袈裟に微笑んだ。