「今日、藤原くんの家で夕飯をごちそうになったの」

家に帰ると両親は今か今かと帰りの遅いわたしを待っていた。

こんな遅い時間に帰宅するのは初めてかもしれない。

わたしの言葉に両親はソファから転がり落ちそうになるぐらい驚いていた。

メッセージでも入れておけばよかったかなと申し訳なく思うわたしとは対照的にどうしてそういう流れになったのか両親、特に母は興味津々といった様子で尋ねた。

学校を無断早退して藤原くんと一緒に緑が丘公園でお花見をしたこと。

それから、突然の雨に降られて藤原くんの家に行ったこと。

藤原くんのおばあさんとおじいさんはとても優しくて、夕飯を一緒にと誘われてごちそうになり、今家の前まで藤原くんに送ってきてもらったこと。

一連の流れを話したわたしはしまった、と心の中でため息をついた。

無断早退したという部分は話さなくてもよかったのかもしれない。

「お花見、楽しかった?」

無断早退には全く触れる様子のない母の言葉に面食らう。

「う、うん。楽しかったけど……」

「けど?」

「今みたいにしゃべれないから、残念だった」

本当は面と向かって今みたいにしゃべりたい。

言葉のキャッチボールをしてみたい。

わたしは藤原くんと出会ってからどんどん欲張りになっている気がする。

「そう。藤原くんとお話することができたらいいね」

「うん、いつかできたらいいな」

「結衣は藤原くんに良い影響を与えてもらってるのね」

「え……?」

母の言葉に顔を持ち上げる。