藤原くんの家を出る頃には外は陽が落ちて真っ暗だった。
雨はいつのまにか上がっていた。
【夕飯まで頂いてすみませんでした。ごちそう様でした】
おじいさんとおばあさんにお礼を言って家を出て、大きな水たまりを避けるように歩く。
結局あの後、おばあさんが夕飯を作ってくれるということになりお言葉に甘えてしまった。
藤原くんのおじいさんとおばあさんそれから藤原くんとわたし。
4人でテーブルを囲み食事を摂るなんて不思議な光景だ。
でも、すごく居心地がよかった。古民家のような雰囲気の室内は田舎にある父方の祖父母の家とどこか似ていて安心したし、おじいさんとおばあさんが手塩にかけて育てた野菜は新鮮でどれもとても美味しかった。
「ごめんな、疲れただろ?」
わたしは首を横に振ってこたえた。
暗くて危ないから家まで送ると言ってきかない藤原くんと一緒に街灯の少ない凸凹道を歩く。
こうやって家族以外の誰かと一緒に食事をとるなんてもうしばらく経験していない。
今日無断早退をしたことでわたしはとても濃い時間を過ごすことができた。
明日、先生に何か言われるかもしれない。
でも、そんなことどうでもいいことのように思えた。
こんなことを考える自分に驚きだ。
でも、今、この瞬間がとても大切だったから。
明日のことなんて考える余裕はないぐらいに。
生きていると実感が湧くようなそんな感覚。
歩きながらふと空を見上げると満点の星空が広がっていた。
思わず立ち止まる。
いつも斜め45度の世界に生きてきたわたしはいつからか空を見上げることは少なくなっていた。
星空はこんなにも綺麗なのだとそんなことを考える心の余裕が生まれたことが単純に嬉しかった。
大きく息を吸い込む。
爽やかだと予想した匂いはアスファルトに染み込んだ雨水の匂いで臭くて心の中で苦笑いを浮かべる。
現実はやっぱりそううまくはいかないようだ。
「星、綺麗だなー。明日は晴れだ」
隣を歩く藤原くんもわたしと同じように空を見上げる。
わたしたちは揃って空を見上げた。
心の中で願う。こんな穏やかな日々が続きますように。
ただこうやって同じ時間を共有できる藤原くんに出会えたことに、この時のわたしは心の底から感謝していた。
雨はいつのまにか上がっていた。
【夕飯まで頂いてすみませんでした。ごちそう様でした】
おじいさんとおばあさんにお礼を言って家を出て、大きな水たまりを避けるように歩く。
結局あの後、おばあさんが夕飯を作ってくれるということになりお言葉に甘えてしまった。
藤原くんのおじいさんとおばあさんそれから藤原くんとわたし。
4人でテーブルを囲み食事を摂るなんて不思議な光景だ。
でも、すごく居心地がよかった。古民家のような雰囲気の室内は田舎にある父方の祖父母の家とどこか似ていて安心したし、おじいさんとおばあさんが手塩にかけて育てた野菜は新鮮でどれもとても美味しかった。
「ごめんな、疲れただろ?」
わたしは首を横に振ってこたえた。
暗くて危ないから家まで送ると言ってきかない藤原くんと一緒に街灯の少ない凸凹道を歩く。
こうやって家族以外の誰かと一緒に食事をとるなんてもうしばらく経験していない。
今日無断早退をしたことでわたしはとても濃い時間を過ごすことができた。
明日、先生に何か言われるかもしれない。
でも、そんなことどうでもいいことのように思えた。
こんなことを考える自分に驚きだ。
でも、今、この瞬間がとても大切だったから。
明日のことなんて考える余裕はないぐらいに。
生きていると実感が湧くようなそんな感覚。
歩きながらふと空を見上げると満点の星空が広がっていた。
思わず立ち止まる。
いつも斜め45度の世界に生きてきたわたしはいつからか空を見上げることは少なくなっていた。
星空はこんなにも綺麗なのだとそんなことを考える心の余裕が生まれたことが単純に嬉しかった。
大きく息を吸い込む。
爽やかだと予想した匂いはアスファルトに染み込んだ雨水の匂いで臭くて心の中で苦笑いを浮かべる。
現実はやっぱりそううまくはいかないようだ。
「星、綺麗だなー。明日は晴れだ」
隣を歩く藤原くんもわたしと同じように空を見上げる。
わたしたちは揃って空を見上げた。
心の中で願う。こんな穏やかな日々が続きますように。
ただこうやって同じ時間を共有できる藤原くんに出会えたことに、この時のわたしは心の底から感謝していた。