だから藤原くんの気持ちなんてまったく考えてもいなかった。

あの時、藤原くんはどんな気持ちでわたしに声をかけてくれたんだろう。

わたし、バカだ。バカすぎる。

すべてわかったような気になっていただけなのかもしれない。

みんなの気持ちを先読みして人に気を遣って遠慮して。

でも、全然分かっていなかった。少なくとも、藤原くんの気持ちには1ミリも。

『今までもずっとそうやって過ごしてきた?教室の中で一人でいることが結衣の望み?』

『俺にはそうは思えないんだけど』

あの時藤原くんの言葉に、得体のしれない焦燥感が全身を駆け巡った。

今なら、分かる。

藤原くんの言葉はわたしの心の中を見透かしているかのように、封印したわたしの気持ちを代弁してくれていた。

正直、彼から距離を置かなければならないと思っていた。

わたしのテリトリーに土足で足を踏み入れてくるから。彼と離れよう。彼に近付いてはいけない。

自分を守るための防衛本能がわたし自身にそう言い聞かせてた。

でも、本当は心のどこかで誰かが自分のテリトリーの中に入ってくれることを願っていた。

誰かと繋がりたい、と願っていた。

一人は好きだ。一人の時間も大好き。

だけど、ひとりぼっちは嫌い。孤独はもっと大っ嫌い。

『結衣は結衣でいいんだって。できる部分は誇りに思って、できない部分はそれを認めてあげてよ。全部100%完璧じゃなくていいんだし。自分のことちゃんと認めて好きになってあげなよ。そうしないと結衣が可哀想だから』

藤原くんの言葉が蘇る。