誰かの為に自分から何かをしてあげたいと思うなんて。

「寒くない?」

【大丈夫だよ。ありがとう】

「なぁ」

なに?という意味を込めて藤原くんの目を見て首を傾げる。

藤原くんはなぜか真剣な表情を浮かべている。

一瞬だけ、空気が張り詰める。

藤原くんの緊張が空気越しに伝わってきて思わず身構える。

えっ。なんだろうこの雰囲気。

どんな話?あまりよくないこと?

ごくりと唾を飲みこんでその言葉の続きを待つ。

すると、藤原くんは意を決したように口を開いた。

「番号、交換しよう」

番号交換しよう。番号交換しよう。番号交換しよう。

藤原くんの言葉がグルグルと頭の中を回る。

『マジか。じゃあ、こうしよう。公平にじゃんけんで決めるってことで』

『いっくぞー!出さなきゃ負けだよ、最初はグー、じゃんけーん』

前に番号を聞かれた時、わたしは激しく首を横に振った。

お願いだからわたしに構わないで、と心の中で叫んだ。

『もう構わないでくれって顔してる』

『俺のことしつこいしウザいって思ってる?どう?正解?』

『俺が話しかけなければ、結衣はこの教室で平和に過ごせんの?』

あの時、余裕そうな表情でそう言っていた藤原くんをわたしは拒んだ。自分が傷付きたくなくて。