「――ただいま」

藤原くんがコンビニ袋を手に部屋に入ってきた。

おかえり、の代わりに小さく頭を下げる。

「また雨降ってきた」

「悪かったね。ご苦労様」

「この雨の中じいちゃんまだ畑にいたけど」

「困ったじいさんだねぇ。子供じゃないんだからしばらくほうっておけば帰ってくるだろう。さてと、お茶の用意でもしようかね。ちょっと待っててね」

おばあさんはゆっくりと立ち上がると台所へと歩き出した。

藤原くんはおばあちゃんに受け取ったタオルで髪を拭きながらわたしの隣にあぐらをかいて座った。

「ごめんな、結衣。ばあちゃんおしゃべりだっただろ?」

【そんなことないよ。色々お話できてよかった】

藤原くんの過去に胸が痛む。

でも、藤原くんのことをわたしはほんの少しだけ知ることができた。

それと同時に知りたいという気持ちが沸き上がってくる。

藤原くんはいつだってわたしに手を差し伸べ、背中を押してくれた。

わたしにも同じことができるとは思えない。

だけど、わたしにできることがあるならばしたいと思えた。

こんなことを考えるのは生まれて初めてだ。