「あれっ、ヤバ。また泣かしちゃった?」

違う。悲しくて泣いてるんじゃない。嬉しくて。嬉しく泣いてるの。

「俺、昔から人を励ましたりすんの苦手なんだよなぁ。いつも泣かれる」

藤原くん。それは違うよ。むしろ励まし上手だからみんな泣くんだよ。

少なくともわたしは藤原くんのその温かい言葉に励まされているし、救われている。

ポンポンッとわたしの頭を優しくたたくと、藤原くんはゆっくりとこう切り出した。

「前にさ、兄貴の話したじゃん?」

そう言えば前に言っていた。お兄さんがいると。

「ずっと黙っててごめん。俺の兄貴も結衣と同じ場面緘黙症だった」

えっ……?

あまりの驚きに弾かれたように顔を持ち上げる。

「発症したのは、兄貴が小5の4月。家では普通に過ごしてたんだけど、5月の家庭訪問の時に兄貴が学校で一言も言葉を発しないって担任に言われてそれで発覚した」

まさか藤原くんのお兄さんがわたしと同じ場面緘黙症を患っていたなんて。

「兄貴と俺って正反対の性格だった。適当で好き勝手なことやってた俺とは違って兄貴は繊細で誰に対しても優しくて気遣いができるタイプでさ」

【キッカケはあるの?】

わたしは友達の裏切りが原因だった。

そして、その日を皮切りに学校で言葉を発することができなくなってしまった。