「そもそも結衣の言う普通ってなにかよくわからない。学校でクラスメイトみんなと仲良く話すのが普通?自己紹介をうまくできるのが普通?友達がたくさんいることが普通?」

【藤原くんは普通のことが普通にできているからそれが分からないんだよ】

少しとげのある言い方になってしまったかもしれない。

そんな心配をよそに藤原くんはくすっと笑った。

「いや、結衣は俺を一体何だと思ってんの?俺、クラスメイト全員と仲良く話せるわけじゃないよ。自己紹介だってうまくできてるかって言われたら微妙だし。友達だって100人も200人もいないよ?」

【でも】

でも。そのあとの言葉が続かずペンが止まる。

「みんながみんな結衣の言う普通じゃなくたっていいじゃん。みんな同じだったら気持ち悪いし。人によってできること、できないことも違うし足りない部分を足りてる人が補ってあげればいいだけじゃん」

藤原くんはそっとわたしの目の下の涙を指で拭う。

「結衣は結衣でいいんだって。できる部分は誇りに思って、できない部分はそれを認めてあげてよ。全部100%完璧じゃなくていいんだし。自分のことちゃんと認めて好きになってあげなよ。そうしないと結衣が可哀想だから」

さらりと言ってのけた藤原くんの表情は優しい。

その表情を見ていると、再び涙が溢れた。