早く見つけてあげないと。あたりを見渡してもお母さんらしき人はいない。
「ママはどんな人?髪は短い?長い?」
「長いよ」
「うーん、何色のお洋服か分かるかな?」
「わかんない」
「そっか。わかんないよね」
女の子を安心させようと髪を撫でた瞬間、「あや――!!」視界の隅に駆け寄ってくる女性の姿が映った。
「ママ――!!」
女の子がわたしの手を離して駆け出していく。
女性は女の子を抱き上げると、わたしのいる方へと歩み寄った。
「一緒にいてくれてありがとうございます。少し目を離した隙に迷子になってしまったみたいで……。本当に助かりました」
女の子のお母さんはわたしに深々と頭を下げた。
「いえ、無事に会えてよかったです」
そう言って微笑んだ時、ポンポンッと肩を叩かれた。
「結衣――?」
振り返ると、二人分の通学バッグを持って藤原くんが立っていた。
その瞬間、サーッと顔から血の気が引いていく。