昼食を食べ終えた頃、空に急に雲がかかりはじめた。
さっきまでの晴天が嘘みたいに空は灰色になり、冷たい風が吹き始めた。
周りにいた大勢のお花見客が立ち上がりあちらこちらでシートを畳み帰る準備を始める。
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
藤原くんが公園の隅にあるトイレへ向かい一人になったタイミングで、ふと近くにいる2歳ぐらいの女の子に気が付いた。
泣くのを必死で堪え心細そうにあたりをキョロキョロと見渡している女の子に周りの大人たちは片付けに夢中なのか全く気付いていない。
どうしたんだろう。迷子かな……?
その場で大きく息を吸い込んで「あ、あ、あ」と声を出す練習をする。
大丈夫。今なら声が出せる。
これなら女の子に声をかけてあげることができる。
立ち上がり女の子の元へ歩み寄り声をかける。
「どうしたの?迷子になっちゃった……?」
そう尋ねると、女の子は潤んだ瞳をわたしに返した。
「ママがいないの」
「ママと一緒に来たの?」
「うん」
「お姉ちゃんと一緒にママを探そうね」
わたしはそっと小さな手のひらを握った。
その手のひらはほんの少しだけ不安そうに震えている。
さっきまでの晴天が嘘みたいに空は灰色になり、冷たい風が吹き始めた。
周りにいた大勢のお花見客が立ち上がりあちらこちらでシートを畳み帰る準備を始める。
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
藤原くんが公園の隅にあるトイレへ向かい一人になったタイミングで、ふと近くにいる2歳ぐらいの女の子に気が付いた。
泣くのを必死で堪え心細そうにあたりをキョロキョロと見渡している女の子に周りの大人たちは片付けに夢中なのか全く気付いていない。
どうしたんだろう。迷子かな……?
その場で大きく息を吸い込んで「あ、あ、あ」と声を出す練習をする。
大丈夫。今なら声が出せる。
これなら女の子に声をかけてあげることができる。
立ち上がり女の子の元へ歩み寄り声をかける。
「どうしたの?迷子になっちゃった……?」
そう尋ねると、女の子は潤んだ瞳をわたしに返した。
「ママがいないの」
「ママと一緒に来たの?」
「うん」
「お姉ちゃんと一緒にママを探そうね」
わたしはそっと小さな手のひらを握った。
その手のひらはほんの少しだけ不安そうに震えている。