その日、家に着くと言葉はすらすらとわたしの口をついて出てきた。

喉の奥に感じたあの違和感はない。

よかったと胸を撫で下ろしたものの、翌日学校に着くとまた同じ症状が現れる。

どんなに声を出そうと思っても、言葉が出てこない。

友達に挨拶することも、返事をすることもできなくなったわたしはクラスで浮く存在になってしまった。

休み時間のたびにトイレにこもり声を出す練習もした。

口を大きく開いて言葉を出そうと息を吸い込む。息を吐きだすように声を出そうとしても空気しか出てこない。

顔を真っ赤にしながら何度も何度もそれを繰り返す。

過呼吸になりそうになるぐらい苦しいその練習は結局実を結ぶことはなかった。

あたしはその日以来、学校で言葉を発することができなくなった。

それは高校に入学し、高2になった今も変わらずに続いている。