『泳げ!たい焼きくん』だ。
この曲がヒットしたため、たい焼きが一気にメジャーになったとも言われている。
「ここのBGMにすりゃいいじゃねーか?」
楽さんがやや得意げに言った。
確かに客寄せにかけようと思ったこともあったけど__。
「歌詞、知ってますか?」
「まいにち、まいにちー?」
楽さんが途中まで歌うと「僕らはてっぱんのぉー」と亀さんが引き継ぐ。
「うぅえで、焼かれてー?」
吾郎さんがそこまで歌うと、少しの間があって、4人が顔を見合わせた。
そして。
「嫌になっちゃうよー!」
そりゃもう、息がぴったりの大合唱。
この4人は、他人を貶めることにだけ結束が固まるんだ。
「やめて下さいよ。だからかけないんです!」
僕が遮ると、4人は大笑いして歌い続ける。
なにが「ある朝、店のおじさんと喧嘩して」だよ。
まだおじさんじゃないってーの!
「海に逃げる」って、ふやけるし!
ひとりで憤慨していたけど、手拍子に合わせて声を揃えて歌い上げる4人を見ていたら、馬鹿らしくなってきた。
まぁ、たい焼きは結局、おじさんのところに戻ってきたし。
許してやるかな。