「2枚、あるか?」
やってきたのは源さんで、今日はお持ち帰りするらしい。
少し時間がかかると言うと、素直に待つと言う。
「あのこないだ始めたばっかの雑貨屋、もう辞めるらしいな」
「みたいですね」
「まだ半年も経ってねーだろ?」
「3ヶ月です」
僕が答えると、源さんのことだから「根性ねーな」とバッサリ斬り捨てるかと思ったが、腕組みをして考え込んでしまった。
たった3ヶ月で答えを出すには、早すぎるだろう。
この商店街に根付いてほしいという気持ちがひしひしと伝わってくるが、商いの厳しさを知っているのも源さんで、決断を下すのは逆に早いに越したことはない。
ただ、組合を引っ張っている源さんとしては、どうしていいか頭を抱えているようだ。
「おめぇーさんは、うまくいってんのにな?」
「いや、そうでもないですよ」
素直に答えると、源さんがびっくりしている。
「いや、今はいいんですよ、寒いから。単純に、たい焼きは夏に売れないんです。かき氷とかでしのいでいるだけで、冬に夏の分も売らないといけないし」
「確かに、夏には売れねーわな」
「ですね。それに僕がやっていけるのは__ここを引き継いだからですよ」
そうなんだ。
僕はここを、師匠から引き継いだ。