急遽、アーケードで開催されることになった『コロ争奪戦』は物々しい雰囲気に包まれていた。
互いのプライドをかけたレースだ。
「なんでお前も来てんだよ!」と源さんが怒鳴る相手は、楽さんだ。
「大志が気に入ったみたいでな。悪いが、俺の優勝だ」
「馬鹿いうな!俺の餌に勝てるわけねーだろ!」
源さんが持ってきた皿には、香ばしく焼かれたお肉が山盛りだった。
「お前、そんなの食わしてねーだろ?卑怯者!」
「お前も鯛のお頭つきってなんだよ!魚屋が出しゃばんじゃねーよ!」
変なところで諍いが始まろうとしている。
「亀さん、それは__?」
「マスクメロンな。うちで1番高いやつ」と、最早、コロの餌じゃない。
「なんでおめぇーも、並んでんだ?」
ぎろりと源さんに睨まれたけど、僕は素知らぬ顔でカイシキを地面に置いた。
その上には、焼けたばかりのたい焼きが乗っている。
4人が横一線に並び、吾郎さんがおさえているコロにそれぞれが呼びかける。
コロが誰の用意した餌を食べるか?
ふふふっ。
僕は心の中でほくそ笑んだ。
みんなには悪いが、コロは大のアンコ好きだ。僕が勝つのが1番、丸く収まる。だからコロ、僕のたい焼きを食べるんだ。
「じゃ、離すぞ!」
吾郎さんが掴んでいた紐を離すと、真っ直ぐに僕のところに駆けて__。