コロは、おとなしくなった。
素直に餌を食べるようになり、商店街のゴミを荒らすこともない。唸ることも吠えることもなく、すっかり僕たちと慣れ親しんでいる。
コロは、ずっと大将との約束を守っていたんだ。
過去に戻り「よし!」と許しが出たことで、呪縛が解けた。
となると次は、新しい飼い主を探さないといけない。
それまで、僕たちのお店がコロを1日ずつ面倒を見ることになった。
その前日が亀さんで、今日が源さんの番だ。
しかし、亀さんはひ孫と遊ばせてやりたいと1日延長を申し立てたが、源さんも孫に見せたいという。
コロがどうこうというより、すでに本人同士の意地の張り合だ。
「それじゃ、こうしませんか?」
仕方なく、僕はある提案をした。
「みんながそれぞれ餌を用意するんです。その食べた餌のところに行くっていうのは?これなら恨みっこないですよね?」
2人は顔を見合わせたが、すぐにぷいっと横を向く。
「やろうじゃねーか。いつも食わせてる餌もってくりゃいいんだろ?」
「俺も構わない」
源さんと亀さんが、決して目を合わせないまま立ち去る。
コロを残したまま、みんな居なくなった。
コロはずっと、たい焼きから目を離さない。