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源さんと亀さんはやってくるなり言い合いを始めた。


「約束が違うじゃねーか!」

「1日くらいいいだろう!」

「今日から俺の番なんだよ!」

「ひ孫が来るんだよ、大目に見ろよ!」

「てめぇーのとこのひ孫、生まれたばっかじゃねーか!犬みても分かんねーだろうが!」

「それを言うなら、お前とこの孫も大差ないだろ!」


2人が、紐を引っ張り合っている。一歩も譲らない様子でにらみ合い、収拾がつかない。頼みの楽さんは大志くんにしか興味ないし、吾郎さんはあんこを啜っている。

となると__。


「たい焼き屋!おめぇーどう思うよ?」

源さんの矛先が僕の体を貫く。


「ちょっとくらいいいと思うだろ?」と亀さんが甘えたな声を出す。



こうなると思った。

「あっ、いいこと思いつきました。源さんと亀さんで一緒に面倒を見るというのは?」



最後まで言い終わらないうちに、2人は言い争いを再開する。

ひとに意見を聞いておいて、それはないだろ?


なぁ?

お前もそう思うだろ?


僕はおとなしく座っている、コロに問いかける。



自分を奪い合う2人の間で、コロは僕だけを見ていた。

僕が焼き上げた、たい焼きを。