朝の5時に、コロの鳴き声が境内に響き渡る。
『わんっ』と吠えてもダメなら『くぅー』と甘えた声で鳴き始めると、みかどの引き戸が開く。
「ちょっと、早くないか?」
大あくびをしながら大将がやってくる。
しかし、一度起きてしまえば寒さで目も冴えるのだろう。
コロの散歩に出かける。
アーケードをのんびり突っ切り、少し離れたやえさんのお墓まで行くのが、日課となっていた。
時間にして1時間。
雨の日でも、散歩という名のお墓詣りは欠かさない。
昼と夜にも長めの散歩に行く。
目に見えて元気になっていく大将に、どう言葉を掛けていいか分からなかった商店街の仲間も、気安く声を掛けるようになっていた。
「待て!」
餌を間に挟み、今日もしっかりと言いつけを守るコロ。
「俺が退院祝いで拾ったけど、あいつ分かってたかなぁ?」
餌が欲しくて唸るコロの頭を撫で、大将が語りかける。
「俺がだめになるの分かってたから、お前を置いてったんだな。お前の世話やんないといけないしな」
今日の語りかけはいつもより長く、コロの辛抱も限界に近い様子。
「ありがとな、コロ」
ぽんぽんと、軽く頭を叩き__。
「よし!」