ぷすぷす。
そんな音が聞こえてきそうだ。
大小、いくつもの穴が開いてくる。ホットケーキを焼いたみたいに。そうなんだ、僕のたい焼きは和菓子というより、洋菓子に近い。そんな甘い香りがするのだと、お客さんたちが揃って口にする。
千枚通しでたい焼きを持ち上げ、反対側の型にチャッキリで生地を流す。
ほんの少しだけ。
両方の鉄板を持ち上げて__すっと蓋をする。
ここでしばらく蒸し焼きにするのがポイント。
蓋を開けると、油ムラのない綺麗なたい焼きが出来上がっていた。
もし次の注文が入っていれば、また6つの型に生地を流し込むってわけ。
裏面が焼けたら、6枚のたい焼きの完成だ。
注文は3枚だけれど、これでいい。
『ありき』は基本、焼きたてしか売らない。
どうしても焼きたてのたい焼きを食べてほしいという思いがある。
焼きたてを手にした時、誰もが顔を綻(ほころ)ばせるから。
お茶の準備をしていると__「焼けてる?」とお客さんが入ってきた。
「3枚ならもうすぐ焼き上がります」
「じゃ、3枚でいいわ。いい匂いがしたから」
いつも買ってくれる常連さんだ。
ほらね、6枚全部売れたでしょ?