『コロ』は団子屋『みかど』の看板犬だった。
確かに懐く犬ではなかったけど、この商店街では誰もがよく知っている。
毛並みのいい芝犬はでも、見る影もないくらい薄汚れ、お店のゴミというゴミを食い漁っていたんだ。
商店街の中で唯一、観音様がおさまっている神社の敷地内にお店を構えていた『みかど』は、みたらし団子専門だった。
「みたらし」と「やじろ」の2種類のみ。
「みたらし」は、もち米を丸くしたもので、みかどはさらにそれを平たく潰してある。「やじろ」は細長くて四角い形をしたもので、そのどちらもとても柔らかく、薄めの蜜が絡みついていた。
観音様をお参りしたあと、必ずといっていいほどこのみたらし団子を食べるのが習わしというくらい、定着していたんだ。
ついこの間までは__。
「このままじゃ、保健所に連絡されんじゃねーか?」
楽さんが眉を寄せる。
大志くんの安全を思うなら、どうしてそんなに心配そうな顔をするのか?
「それがよ、もう通報した店が何件かあるらしい。ゴミを漁ってる野犬がいて困ってるってな」
「でもコロだろ?」と、亀さんが源さんを睨んでいる。
噛みつかれそうになって怒っていたのに?
「なんとか、なんないのか?」と吾郎さんが出来上がったたい焼きを見つめて言った。
要は、みんな気にかけてるんだ。
野犬になってしまった、コロのことを__。