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「やられたぜ‼︎」
入ってくるなり、源さんが毒づいた。今にも椅子を蹴り飛ばしそうな勢いだ。
「俺のところも、こないだやられたばっかりだ」
亀さんも険しい顔で腕組みをしており、うんうんと頷いている吾郎さんはたぶん、まだ被害に遭ってはいない。
「俺もおちおち、こいつ連れて歩いてらんねーよ」
楽さんが、眠っている大志くんを見つめる。
ここしばらく、大丸商店街は殺伐とした空気に包まれていた。
「おめーとこはどうだ?」
熱いお茶を啜り、少し落ち着きを取り戻した様子の源さんが、僕に尋ねてくる。
「うちはまだ大丈夫です。ゴミは持って帰るようにしてるし」
丁寧に答えたつもりなのに、全く興味ないのか4人は早くも対策を話し合っている。
「捕まえることできねーのか?」
楽さんが声をひそめる。
「俺はよ、コロッケやろうとしたんだ。そしたら唸りやがって」
「俺もりんごやったら、噛みついてきたんだ」
源さんと亀さんは、心外だとでも言うように怒っている。
「俺だって煎餅やったけど、知らん顔だった」
同じように怒っている吾郎さんだが、それはちょっと違うような気がするけど__。
「俺も刺身やろうとしたら、吠えやがってよ」
楽さんが締めくくる。
つまり、全員が『コロ』に餌をやろうとしたらしい。