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「おい、もう閑古鳥か?」

源さんは入ってくるなり、けたけたと笑った。


「ひまでちゅねー」と楽さん大志くんに頬ずりし、がははと笑う。

「商売の才覚がないんだな」と亀さんが続き、しんがりの吾郎さんが「俺を見習うんだな」と片腹痛いことを言う。



つまり、ありきは日常を取り戻していた。

女子学生で溢れかえっていたのは、せいぜい3日。



「なんか、ロールパンで恋が叶うってテレビでやってたらしくて」

我ながら言い訳めいているけれど、実際ここ最近パン屋の『ラ・ムール』は朝からごった返していた。


ごっそりお客を奪われたんだ。



というより、女子学生の流行り廃りは目まぐるしい。

「いいんですよ、あんまり忙しいのも困るし」


あんこを差しながら言うと「ちゅよがりでちゅねー」と楽さんがからかう。

「でもよ、揉みじやの由梨、結婚だってな」


ここ大丸商店街、1番の情報通の源さんは、高橋さんのスペックを事細かに説明する。



いったい、血液型までどこから仕入れるのか。

半ば呆れながら鉄板をふたすると、お店の前を美代ちゃんが通り過ぎていく。


その隣には、同じ年頃の男の子が歩いていた。



仲睦まじいその姿に、ちょっとでも僕のたい焼きが役立ったのかな?と誇らしい気持ちになる。

でも案外、おまじないとかじゃなく、2人で並んで仲良く食べただけかも。



温かいたい焼きは、心が重なり合うものだから__。