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「おかえりなさい」

僕は、そっと声をかけた。


元の時代に戻ってきた、由梨さんに。



寝ぼけ眼をこすりながら、由梨さんは何度か目を瞬かせる。

ここがどこか、ようやく思い出したようで__。



「知ってたんでしょ?」

「えっ?」

「あいつが、過去にいるって。だからうまいこと言って、あたしを過去に送り出したんじゃないの?」

「僕はそんなに器用じゃないですよ」


とは言ったものの、由梨さんはまったく信じていない様子だ。

未来に行きたいと言っていた由梨さんは、過去に行った。


そしてそこで、答えを見つけたんだ。



「ねぇ、まだいい?」

少し照れくさそうに続けた。


「たい焼き、欲しいんだけど」と。

「いいですよ。いくつですか?」

僕は尋ね、焼く準備をする。


牧子さんか、それとも誰かに買っていくのか、あんこ好きな由梨さん自身が食べるのか__?



「いっぱい、欲しいの」

「いっぱい?」

「そう、紙袋から溢れるくらい」

「わかりました」


ひとつ頷いて、たくさんのたい焼きを焼いた。そりゃもう、大漁だ。

溢れんばかりのたい焼きを胸に、由梨さんが出ていく。



その顔は、少し意地悪そうに見えた。