「由梨ちゃん、どこ行くの?」
「うるさい」
「ねぇ、由梨ちゃん」
「うるさい!」
あたしは後ろをついてくる原田を、思い切り突き飛ばした。
「ついてくるな!」
そう釘を刺し、再び歩き出す。
振り返らなくても分かる。尻もちをついていた原田が立ち上がり、またあたしの後をついてくる。
学校からの帰り道。
家とは違う方向にどんどん進んでいくあたしは、自分でもどこに行きたいのか分からなかった。
やっと納得できそうな答えが見つかったはずなのに__。
母さんの震える肩が、目に焼き付いて離れない。
どうして泣いていたのか?
離婚をするから?それとも、あたしが父さんについていくと気づいたから?
「由梨ちゃん、由梨ちゃんてば!」
原田の泣き声が追いかけてくる。
あたしは振り払おうと、バスに飛び乗った。どうしても帰りたくなかったんだ。母さんの顔を見る、自信がなかった__。
「なんでついてくんのよ!」
「だって、どこ行くのかと思って」
「放っといてよ!」
原田の肩を突き飛ばすが、もうバスは走り出した後だ。
離婚を知ってから、あたしはしばらく荒れた。もともと女子の友達はおらず、そうなるとあたしに寄ってくるのは、原田だけだった。
バスはどんどん、家から遠ざかっていく。