いつの時代も、いじめはあった。
ただ、今とは違い、昔はどこかさっぱりしていた気がする。今ほど、ネットやSNSが蔓延していないからだろう。直接的で、分かりやすい。だから止める術も、直接的だ。
「やめろ!」
闘牛のように向こうから突進してくるのは__あたしだ。
小学生の頃の、あたし。
「やめろっ!」と、男の子に真っ正面からぶつかり輪を崩す。飛びかかってくるクラスメイトをなぎ払い、蹴り上げ、突き飛ばす。
誰よりも体格のいいあたしは、見事にいじめっ子たちを蹴散らした。
「思い出した」
あたしはぼそりと呟く。
子供の頃から正義感が強く、いじめを見て見ぬ振りができない性格で、いじめのターゲットであった丸々と太った男子を助け起こし__?
その腹に、思いっきり蹴りを食らわせた。
「原田だ」
校庭の木陰から見守っていたあたしは、誰にともなく言った。
デブの原田。いっつもいっつもいじめられてて、やり返せってあおるのに何も出来なくて、あいつを見ているだけで腹が立って仕方がなかった。
「やり返せよ!」と、原田を殴っているその力はさっきのいじめっ子たちより容赦ない。
「痛い、痛い!」と泣き出す原田を「泣くな!男のくせに!」とさらに殴りつける、小学四年生のあたし。
記憶の波が押し寄せてくるのとは、また違った波がやってくるのが分かった。
あっ、ページがめくれる。