「おーい、邪魔するぜ!」
今日、1番乗りのお客さんは、精肉店『玉源』を営んでいる、その名の通り源さんだ。白髪の源さんの後ろには『丸亀商店』の亀さんが、そしてしんがりを務めるのは煎餅屋『もち吉』の吾郎さん。
3人はぞろぞろとやってきて、手慣れた様子でそれぞれの椅子に座った。
店は20坪と狭いが、焼き場の向こうには食べられるスペースを設けてある。焼く手元が見えるようになっていて、子供なんかは顔を輝かせて出来上がりまで張り付いている。
「1枚ずつでいいですか?」
僕が尋ねると「おぅ」と、3人が手を上げた。
1枚ずつが3人で、3枚。
焼き台は、1連で一気に6枚が焼けるようになっている。
寸胴に並々と入った生地を、杓(しゃく)ですくってチャッキリに入れる。チャッキリとは、生地を流すステンレス製の器具で、指先1つで使う量を調整できるんだ。
無機質なたい焼きの型が6つ、僕を見上げていた。
その目の辺りから、生地を流し込む。
1、2、3___4、5、6。
テンポよく6枚分に垂らすと、鉄板を持ち上げて尻尾まで流す。
尻尾から少し溢れさせるのが、ポイントだ。