えっ?
ここは__?
向こうに見えるのは、学校?ということは、ここは、校庭?
そう思った瞬間、弾けんばかりの喧騒に包まれる。
思わず圧倒されそうになった。子どもって、こんなに力に満ち溢れていたんだ。引いたり疑ったりしない、外に放つだけのエネルギーが校庭を渦巻いていた。
「お前は今日からブタだ!」
「ブタ、四つん這いになれよ!」
「ぶひぶひぶひ!」
校庭の隅で、何人かの男の子たちが輪をつくって誰かを取り囲み、足蹴にしている。
そういえば、たい焼き屋が言っていた。
『過去や未来に行って、誰かに話しかけたり触れたりすることはできます。でも僕たちはその時代に生きているわけじゃないんで、同じ時間軸じゃありません』
『もっと分かりやすく説明してよ』
『たとえば過去の場合、それは由梨さんの過去なので、どんどん流れていくんです。なんていったらいいか__アルバムをめくる感じかな』
『アルバム?』
『そうです。ページをめくると、もう次の記憶にいる感じです』
『分かったような、分からないような?』
あたしはそう正直に言ったけど、これがそうか。
そしてこうも言っていた。
『すぐ帰りたかったら、残りのたい焼きを食べれば元の時代に戻れます』
と。
でもあたしは__食べかけのたい焼きから手を離した。