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ここ、どこ?
あたしは一瞬、なにも思い出せなかった。ほんの一瞬だけ。けれどすぐに記憶が蘇ってくる。そりゃもう、芋づる式に__。
上着のポケットに手を入れると、尾っぽが残った食べかけのたい焼き。
あたしは、たい焼き屋に詰め寄ったんだ。
『未来』に行きたいんだと。未来に行って、あいつと本当にうまくいくのか確かめたい。その強い気持ちと同じくらい、未来に行けるたい焼きなんてあるはずがないって、どこかでホッとしていたような__。
ここは、商店街じゃない。
目の前には、平屋の一戸建て。そしてあたしは、その家に見覚えがあった。
「行ってきます!」
空を突き抜けるような元気な声が、近所に轟く。
向かいの家から出てきたのは、ランドセルを背負った女の子だった。
「えっ?」
あたしは、体を震わせる。
気づけば「待って!」と駆け出していた。
「ちょっと!」
そう呼び止めると、女の子が振り返る。
いくつだろう?
小学生というのは分かるけど、体が大きくてランドセルが脇に食い込んでいた。
「なんですか?」と、落ち着いた声はでも、明らかに警戒している。
あたしは気圧されたように何も言えなかった。