4


ここ、どこ?


あたしは一瞬、なにも思い出せなかった。ほんの一瞬だけ。けれどすぐに記憶が蘇ってくる。そりゃもう、芋づる式に__。



上着のポケットに手を入れると、尾っぽが残った食べかけのたい焼き。

あたしは、たい焼き屋に詰め寄ったんだ。


『未来』に行きたいんだと。未来に行って、あいつと本当にうまくいくのか確かめたい。その強い気持ちと同じくらい、未来に行けるたい焼きなんてあるはずがないって、どこかでホッとしていたような__。



ここは、商店街じゃない。

目の前には、平屋の一戸建て。そしてあたしは、その家に見覚えがあった。



「行ってきます!」


空を突き抜けるような元気な声が、近所に轟く。


向かいの家から出てきたのは、ランドセルを背負った女の子だった。

「えっ?」


あたしは、体を震わせる。



気づけば「待って!」と駆け出していた。

「ちょっと!」

そう呼び止めると、女の子が振り返る。



いくつだろう?

小学生というのは分かるけど、体が大きくてランドセルが脇に食い込んでいた。



「なんですか?」と、落ち着いた声はでも、明らかに警戒している。


あたしは気圧されたように何も言えなかった。