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永遠かと思った。
僕と由梨さんの視線が真っ正面からぶつかり、弾け、溶けて__先に目をそらしたのは、由梨さんのほうだった。
「あたしさ、こう見えてもモテるんだよね」
「えっ⁉︎」
思わぬ矛先から言葉が飛んできたので、喉が詰まった。
「こういう体型のひと、好きな男は意外と多いのよ。たい焼き屋さんはどういうのがタイプ?」
「僕は__」
「ああ、答えなくていい。こう、社交辞令的なやつだから。それでね、それなりに恋愛経験もあるわけよ。でも、あれは違う」
由梨さんの言う『あれ』とは、ルックス完璧銀行マンの高橋くんだ。
「あれは、私の許容範囲こえてる。完全にキャパオーバー」
力なく笑う由梨さんは、それでもどこか寂しげに見えた。
「どこで知り合ったんですか?」
「デパートの催事でね、足ツボ体験コーナーやった時に。なんかもうさ、ひれ伏すくらいのイケメンだったから、普段の倍の力で揉んでやったのよ」
ほくそ笑む由梨さんに「えーっ‼︎」と、つい絶叫してしまった。
僕が初めて足ツボをしてもらったのは、ちょうどお店にいた由梨さんで、あまりの痛さに涙を流して体をえび反りさせたものだ。
ただ、次から痛みは感じなくなったが、その倍の力なんて、そりゃイケメンも台無しに__。
「それがさ、涼しい顔してやがんのよ」