3


永遠かと思った。

僕と由梨さんの視線が真っ正面からぶつかり、弾け、溶けて__先に目をそらしたのは、由梨さんのほうだった。



「あたしさ、こう見えてもモテるんだよね」


「えっ⁉︎」

思わぬ矛先から言葉が飛んできたので、喉が詰まった。

「こういう体型のひと、好きな男は意外と多いのよ。たい焼き屋さんはどういうのがタイプ?」

「僕は__」

「ああ、答えなくていい。こう、社交辞令的なやつだから。それでね、それなりに恋愛経験もあるわけよ。でも、あれは違う」


由梨さんの言う『あれ』とは、ルックス完璧銀行マンの高橋くんだ。

「あれは、私の許容範囲こえてる。完全にキャパオーバー」


力なく笑う由梨さんは、それでもどこか寂しげに見えた。

「どこで知り合ったんですか?」

「デパートの催事でね、足ツボ体験コーナーやった時に。なんかもうさ、ひれ伏すくらいのイケメンだったから、普段の倍の力で揉んでやったのよ」


ほくそ笑む由梨さんに「えーっ‼︎」と、つい絶叫してしまった。

僕が初めて足ツボをしてもらったのは、ちょうどお店にいた由梨さんで、あまりの痛さに涙を流して体をえび反りさせたものだ。


ただ、次から痛みは感じなくなったが、その倍の力なんて、そりゃイケメンも台無しに__。

「それがさ、涼しい顔してやがんのよ」